生誕150年記念。これぞワールドクラスのラフマニノフ!
現代最高のピアニストの一人、キリル・ゲルシュタインを迎えてのラフマニノフの第3ピアノ協奏曲は、作曲者の生誕150年を記念するにふさわしい豪華なキャスティングです。前半は、ニューヨーク・フィル音楽監督時代に交響曲サイクルを完成させるなど、ニールセンの魅力を知り尽くしたアラン・ギルバートが、ひときわ傑作の呼び声高い第5番を指揮。軍隊の行進を思わせるスネアドラムの効果的使用など、第1次世界大戦の影響が色濃く反映された、独創的で高密度なシンフォニーです。
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深い知性と開かれた感性が奏でる、必聴のラフマニノフ
文/高坂はる香(音楽ライター)
7月に、アラン・ギルバート指揮、東京都交響楽団とラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を演奏する、キリル・ゲルシュタイン。ソリストとして世界のトップオーケストラ、コンサートホールから引く手あまたであると同時に、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学教授として後進を育てる優れた指導者でもある。日本から世界に羽ばたく若手ピアニストとして近年注目される藤田真央も、彼の門下生の一人だ。
ゲルシュタインの存在感を特別なものにする要素のひとつは、古典的なレパートリーから複雑なリズムとハーモニーを持つ現代作品まで、幅広い音楽に等しく積極的に取り組むスタンスといえる。なかでも、現代を代表する作曲家として揺るぎない評価を得ているイギリスの奇才、トマス・アデスの作品については、ピアノ協奏曲がゲルシュタインを想定して書かれるなど、演奏の第一人者としても知られている。
ゲルシュタインのそんな好奇心旺盛で開かれた感性は、異色の経歴に由来している。1979年、ロシアのヴォロネジに生まれたゲルシュタインは、クラシックピアノを学びながらも父親の影響でジャズに興味を持ち、14歳で渡米。バークリー音楽院でジャズピアノを学んだ。その後ふたたびクラシックに戻って、名教師であるドミトリー・バシキーロフやフェレンツ・ラドシュらのもと学び、21歳となった2001年にはルービンシュタイン国際ピアノコンクールに優勝。クラシック界での評価を確かなものとした。
10代の多感な時期にジャズを学んだことは、彼のクラシック作品の演奏や解釈にも影響を与えているそう。ゲルシュタインは、「音楽は楽譜だけでなく、もっとどこか別のところからやってくるもの。ジャズを演奏するなか、イマジネーションと呼ばれる、宙を飛んでいるものを追う感覚を経験したことは大きかった。そのおかげで、楽譜に書かれた音楽を演奏するにあたって、たとえ構造がしっかり組み立てられた作品でも、もともと即興的な感性から生まれたものであることを忘れずにいられる」と話す。
そんなその場で生まれる音楽への高い意識は、自身が偉大なピアニストだったラフマニノフが作曲家として抱いていたであろう意図——指揮者、オーケストラのサウンドに反応し、そのステージにあるピアノのポテンシャルを最大限に引き出しながら、柔軟に楽曲を奏でてほしいという願い——を反映するうえで、大切な要素といえる。
実際ゲルシュタインの演奏は、自由で変幻自在だけれど、同時に地に足のついた安定感があって、心地よさとエキサイティングな楽しさを同時に味わわせてくれる。
今回は、これまでにも共演経験のあるアラン・ギルバートとのコラボレーション。知性と豊かな感性を兼ね備えた二人が、都響と刺激を与えあい、ラフマニノフの濃密な音楽世界をどんなふうに描写するのか楽しみだ。名手たちにより幾度となく演奏されてきたこのピアノのマスターピースが秘めた、新しい魅力を引き出してくれるかもしれない。ゲルシュタインは以前アンサンブルについて、「音楽的な会話の栄養素となっているのは、聴衆の存在。それぞれの感情を抱いた人間たちが、一つの会場に集い、空気の振動……音と呼ばれるものを感じ、分かちあう。それは魔法のような出来事だということをいつも忘れずにいたい」と話していた。つまりその場で生まれる表現を大切にする彼にとって、客席に座る私たちもまた、音楽を創造するための一要素に含まれるということ。
彼らのクリエイティヴィティを刺激するべく、好奇心と期待感を存分に膨らませ、オープンな気持ちで会場に足を運ぼう。
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