定期演奏会 Cシリーズ

第1002回定期演奏会Cシリーズ（平日昼）

終了日時：2024年6月28日（金） 14:00開演（13:00開場）

場所：東京芸術劇場コンサートホールホール案内座席表

【定期演奏会1000回記念シリーズ⑦】
6/29都響スペシャルと同演目

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出演

指揮／ヤクブ・フルシャ

プロフィール一覧

ヤクブ・フルシャ　Jakub HRŮŠA（指揮）

バンベルク響首席指揮者、チェコ・フィル首席客演指揮者、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管首席客演指揮者。2025/26シーズンから英国ロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督に就任予定。これまでにプラハ・フィルハーモニア管音楽監督、都響首席客演指揮者、フィルハーモニア管首席客演指揮者などを歴任。
1981年チェコに生まれる。指揮をプラハ芸術アカデミーでビエロフラーヴェクに学び、2004年の卒業以来、チェコの主なオーケストラ、国民劇場にたびたび招かれ、自国での揺るぎない評価を確立。同時に世界各地のオーケストラにも客演。ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、バイエルン放送響、ドレスデン・シュターツカペレ、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、マーラー室内管、フランス放送フィル、パリ管、ルツェルン祝祭管、クリーヴランド管、ニューヨーク・フィル、シカゴ響、ボストン響などと共演を重ねている。オペラ指揮者としても、グラインドボーン音楽祭、ウィーン国立歌劇場、パリ・オペラ座、チューリッヒ歌劇場などに招かれている。
ザルツブルク、ルツェルン、BBCプロムス、エディンバラをはじめとした各国を代表する音楽祭の常連。2021年グラモフォン・アワード受賞、グラミー賞にノミネートされるなど、数々のレコーディングでも高い評価を得ている。
国際マルティヌー協会会長。ロンドン王立音楽アカデミー名誉会員。

photo:©Marian Lenhard

曲目

スメタナ：歌劇『リブシェ』序曲　【スメタナ生誕200年記念】

曲目解説
ヤナーチェク（フルシャ編曲）：歌劇『利口な女狐の物語』大組曲 [日本初演]

曲目解説
ドヴォルザーク：交響曲第3番変ホ長調 op.10

曲目解説

スメタナ：歌劇『リブシェ』序曲

　チェコ国民楽派の父と呼ばれるベドジフ・スメタナ（1824～84）は、生涯に8作のオペラを完成した（第9作『ヴィオラ』は未完）。その中では、第2作『売られた花嫁』が突出して知られているが、それ以外の作品が国外で演奏される機会は少ない。『リブシェ』は第4作で、スメタナが40代後半だった1869年から1872年にかけて作曲された。この歌劇はもともと、オーストリア＝ハンガリー帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世（1830～1916／在位1848～1916）の、ボヘミア王としての戴冠式のために作曲された。この戴冠が実現すれば、帝国内でのチェコ人の地位が上がり、オーストリア＝ハンガリー＝ボヘミア三重帝国が成立するはずだったのだが、これはハンガリーの反対で実現せず、『リブシェ』上演の計画も頓挫してしまう。結局この歌劇が初演されたのは、作曲から9年経った1881年、プラハ国民劇場のこけら落としの際だった。
　リブシェは、チェコの建国伝説に登場する預言者にして、プラハの町の建設を命じた女王だ。大まかに言えば、リブシェが農夫プシェミスルを夫に迎え、チェコの未来を語るというのがあらすじだが、そこに、フルドシュとシチャーラフという対立する兄弟をリブシェが調停し、和解させるというサブプロットが絡む。ただ、物語をドラマティックに進めるというよりも、それぞれの場面を静的に描く、祝祭的なオペラだ。
　民族意識の強い内容ゆえ、国外で上演されることはまれな本作だが、チェコにおいては特別な作品で、この序曲冒頭のファンファーレは、チェコの国家式典で大統領が入場する際に使われている。特に「プラハの春」音楽祭のオープニング・コンサートの冒頭で演奏されているのを耳にされた方も多いだろう。その意味で、スメタナの作品の中で、『リブシェ』は、オペラの分野で《わが祖国》に対応する作品と言うことができる。
　序曲は、金管の荘重なファンファーレで始まる。このファンファーレは、カノン風に進む「ドーソーミ／ソー」、そしてコラール風の「ラーシード／シー」という2つの音形でできている。主部に入ると、まずオーボエがピアニシモで、ファンファーレの2つの音形から派生した主題（リブシェの主題）を歌い始める。やがて音量を増し、クライマックスで金管楽器群が壮大な主題（プシェミスルの主題）を高らかに吹く。主部は、この2つの主題に基づいて進んでゆく。曲の終わり近くでは冒頭のファンファーレが回帰するが、今回は弱音で始まり、やがて力を増していく。最後には主部の主題も現れ、曲を閉じる。
（増田良介）

作曲年代	1869～72年
初　　演	オペラ全曲／1881年6月11日　プラハ国民劇場　アドルフ・チェフ指揮
楽器編成	ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット4、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、大太鼓、シンバル、トライアングル、弦楽5部

ヤナーチェク（フルシャ編曲）：歌劇『利口な女狐の物語』大組曲［日本初演］

　ヤナーチェクの歌劇『利口な女狐の物語』を私自身で組曲に仕立てようと考えたのには、いくつかの事情がありました。私はこれまで「ターリヒ組曲」と呼ばれる版を何度も演奏してきましたが（もちろんターリヒ自身の作品ではありませんし、協力者たちからの依頼に応えて作られた組曲です。この組曲には、ヤナーチェク自身によるオリジナル楽器編成への尊重はなく、ヤナーチェクのオーケストレーションには改善が必要と考えた当時のターリヒの見解が反映されています）、最近では、チャールズ・マッケラスによるウィーンのユニヴァーサル・エディション版を用いてきました。「マッケラス組曲」は、実際には「ターリヒ組曲」とほぼ同じですが、オリジナルの楽器編成に基づいています。一方で私は、別の編曲も同じようによく演奏（レコーディングも）しました。それは厳密に言うと『女狐』の中の、いわゆる「間奏の音楽 “entrʼacts”」（編集部注：器楽のみの部分を中心にしたもの）で、ブルノの指揮者でヤナーチェク作品に詳しいフランティシェク・イーレクによるヴァージョンです。
　ターリヒの組曲は、第1幕全体のアウトラインに多少の加減があるものの、オペラのその他の部分の音楽はまったく登場させていないのに対して、イーレクは（わずかな例外はあるものの）オペラ全体の中からオーケストラだけで演奏される曲を抽出しています。そうした箇所はオペラ全体の中でも多く、それらは個々の場面を繋ぐ役割を果たしています。ヤナーチェクはオペラにおいても「交響曲的な作曲論理 symphonic logic」に基づいているという考えのもと、イーレクは非常に機能的で簡潔な作品に仕上げています。しかし、このイーレクの組曲には、オペラの冒頭はまったく含まれていません。
　数年前ですが、イギリスのグラインドボーンでこのオペラを上演したときに、このオペラ全体におけるオーケストラのみの音楽を、すべて順番どおりにコンサートで演奏できたら素晴らしいだろうと思いつきました。そこで、基本的には既存の2つの組曲を合体させ、さらに、第2幕のいわゆる「居酒屋の場面」の音楽など、含めないでおくのはあまりに惜しい曲を新たに加えることにしました。
　このようにして『利口な女狐の物語』の最も長い組曲をまとめました。ウィーンのユニヴァーサル・エディションから全く新しい形で出版される際には「大組曲Große Suite」と呼ぶことにしました。私はこの組曲に任意でカットできる箇所をたくさん設けましたので、最終的な演奏形態はさまざまに変えることができます。それでも聴き手ははっきりとオペラ全体の印象を受け取ることができるでしょう。冒頭のバレエ的なパントマイムから、ノスタルジックな「森」、そして均整と調和のクライマックスとなる終結部まで、音楽はさまざまな場面を映し出します。
　やはり私にとって重要なのは、この組曲にはオペラ全体の構造が、時系列順に含まれているということです（場合によっては、私はさらに1、2曲の歌唱シーンを付け加えることもあります。ほとんどが女狐と雄狐の恋のシーンです。また森番の最後のモノローグを付け足すこともあります。反対に、いくつかのパッセージをカットして、全体があまり長くならないようにすることもあります。東京での公演ではそうした心配は無用とのことですので、純粋にオーケストラ版全体をお聴きいただきます）。
（ヤクブ・フルシャ／訳：飯田有抄）
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　9作あるレオシュ・ヤナーチェク（1854～1928）のオペラのうち『利口な女狐の物語』は第7作にあたる。原作は、1920年4月から6月までブルノの新聞に掲載された絵物語で、これはスタニスラフ・ロレク（1873～1936）の絵にルドルフ・テスノフリーデク（1882～1928）が詩を付けたものだった。ヤナーチェクは、この物語を愛読していた家政婦に提案されて、このオペラを書いたという。女狐ビストロウシカは、一度は森番に捕まえられるが脱走する。彼女はやがて雄狐と出会い、結婚して子狐たちも生まれるが、行商人に撃たれて命を落とす。森番は、ビストロウシカを懐かしみ、時の流れと、死と再生を繰り返す生命の不思議について思いを巡らす。これが大まかなあらすじだ。
　今回は指揮者のヤクブ・フルシャ自身が編曲した演奏会用組曲が演奏される。このオペラの組曲では、ヴァーツラフ・ターリヒ（1883～1961）やフランティシェク・イーレク（1913～93）の編曲によるものがよく演奏される〔チャールズ・マッケラス（1925～2010）による組曲もあるが、内容はターリヒ版とほぼ同じ。ターリヒが演奏効果を上げるためオーケストレーションに手を入れた部分をマッケラスはオリジナルに戻している〕。しかし、ターリヒ版は第1幕の音楽しか使っておらず、イーレク版はオペラ全3幕から主に管弦楽のみの部分を集めたものだった。
　したがって、オペラ全体をカバーし、声楽が入る部分も多めに取り入れたフルシャ版は、両者のコンセプトを融合し、欠点を補った組曲と言える。なお、フルシャ版も、歌手のパートを楽器で置き換えることはせず、（声楽なしで）器楽部分をそのまま演奏しているので、歌が主旋律を担う部分は大半がカットされている（95分のオペラを30分の組曲に凝縮）。また、同一音形の反復は回数を減らすなど、細かく手を入れた部分もある。
　フルシャ版スコアには幕や場の区切りは明記されておらず、組曲は続けて演奏されるが、ここでは幕ごとに分けて解説する。フルシャ版が典拠とした批判校訂版オペラ全曲スコア（2010年）には、区切りとして幕（Act）と場面転換（Scene change）しか書かれていないため、以下の「前奏曲」「第1場」「パントマイム」などは慣習的な表記に従った。

　第1幕
　前奏曲　峡谷の夏の昼下がり。虫や動物たちが登場。後半では青トンボがバレエを踊る。
　第1場　森番のモノローグはカット。虫たちのワルツ。森番が幼い女狐ビストロウシカを捕まえて小屋へ連れ帰る。青トンボのパントマイム（フルート・ソロで始まる）。
　場面転換　悲し気な弦楽合奏で開始。
　第2場　森番小屋の庭。秋の午後。歯切れの良いオーボエのモティーフで始まるが、女狐に色目を使う猟犬と、森番の息子が女狐をいじめて逆襲され、脚を噛まれる場面はカット。夜になり女狐が眠り、夜明けを迎える音楽が美しい。鶏たちとの争いと女狐の脱走を描くクライマックスで第1幕を閉じる。

　第2幕
　前奏曲　森の昼下がり。全合奏による精力的な音楽。
　第1場　ビストロウシカはアナグマを巣穴から追い出し、それを自分のものにする。前奏と後奏からの計20小節に短縮。
　場面転換　躍動する低音をもつ陽気な音楽。
　第2場　一方、こちらは人間社会。パーセクの居酒屋。友人同士の森番、校長、神父が昔話に花を咲かせるが、その場面は全てカットされ、第2場終盤の広い夜空を思わせる雄大な音楽が演奏される。
　場面転換　「夜空」モティーフの断片をフルートが吹く、わずか4小節の音楽。
　第3場　ヒマワリの垣根に沿う森の道。夜。ほろ酔い気分の校長と牧師が家路をたどる。2人の意中の女性のふりをしてからかうビストロウシカ。森番が正体を見破るが、ビストロウシカは逃げ去る。ここもメインの場面はカットされ、賑やかな後奏8小節のみが採用された。
　場面転換　合唱による精妙な音楽。組曲ではオーボエとイングリッシュホルンが旋律を吹く（前者はフルシャが加筆）。
　第4場　ビストロウシカと雄狐が出会い、結婚式を挙げる。組曲では第4場の終盤、結婚式の祝祭的な音楽のみを採用。

　第3幕　原作は結婚式の場面で終わっているので、第3幕の物語はヤナーチェクのオリジナルだ。第3幕第3場は自らの人生観を反映させた場面であり、生前のヤナーチェクは自分の葬儀で演奏することを希望、その通り実行された。
　前奏曲　ヴィオラとバスクラリネットによる歩くような音形で開始。
　第1場　森のはずれ。秋。正午。行商人ハラシタと森番の会話はカット。狐の一家が現れ、子狐たちが走り回る。ハラシタは銃で狐たちを狙うが、ビストロウシカに逆襲され坂から転げ落ちる。激怒したハラシタの銃弾2発がビストロウシカに命中してしまう（シンバルと低弦）。後奏は哀悼の音楽ではなく、「再生への讃歌」と呼ばれる主題が木管に現れる（この主題が第3場の最終盤でクライマックスを築く）。
　場面転換　4連符のオスティナート音形が時の移ろいを感じさせる。
　第2場　パーセクの居酒屋の庭。失恋した校長を慰めていた森番は、猟犬が老い、自分も歳をとったと語って家路につく。この場面は短縮されているものの、かなり生かされている。
　場面転換　ホルン4本が懐かしい森の雰囲気を醸し出す。
　第3場　森番が第1幕と同じ場所に座り、時の流れについて、いなくなったビストロウシカについて思いを巡らし、感慨にふける。組曲では第3場の後半をそのまま生かし、オペラ全体の感動的な幕切れを聴くことができる。
（増田良介）

作曲年代	オペラ全曲／1921～23年3月　1924年10月改訂フルシャ版組曲／2017年
初　　演	オペラ全曲／1924年11月6日　ブルノ国民劇場　フランティシェク・ノイマン指揮フルシャ版組曲（世界初演）／2018年9月28日　ヤクブ・フルシャ指揮　バンベルク交響楽団フルシャ版組曲（日本初演）／2024年6月28・29日　ヤクブ・フルシャ指揮　東京都交響楽団
楽器編成	フルート4（第3と第4はピッコロ持替）、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット3（第3はコントラファゴット持替）、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、シロフォン、グロッケンシュピール、トライアングル、シンバル、小太鼓、テナードラム、大太鼓、ハープ、チェレスタ、弦楽5部

ドヴォルザーク：交響曲第3番変ホ長調 op.10

　アントニン・ドヴォルザーク（1841～1904）は9曲の交響曲を残した。そのうち、第7番、第8番、第9番《新世界より》は非常に人気があり、第5番と第6番も近年は光が当たるようになったが、初期の第1～4番が演奏される機会は極端に少ない。しかしこの4曲のうち、特に第3番と第4番は、完成度や独創性では後期の作品に及ばないかもしれないが、すでにドヴォルザークならではの個性が十分に感じられる魅力的な作品となっている。
　交響曲第3番を書いたころ、ドヴォルザークは31歳で、第1番・第2番（ともに1865年作曲）からほぼ8年が経っていた。この曲は、当時のドヴォルザークが心酔していたワーグナーの影響が濃いのが特徴で、イングリッシュホルンやハープを用いた特徴的なオーケストレーションに加え、第2楽章や第3楽章には、『タンホイザー』や『ローエングリン』を思わせる部分が随所にある。なお、ドヴォルザークは、オーストリア政府の設立した若い芸術家を支援するための奨学金に応募する際に、交響曲第4番などとともにこの曲の楽譜を送っているのだが、興味深いことに、審査員だったブラームスやハンスリックといった反ワーグナー派の音楽家たちにもこの曲は高く評価され、ドヴォルザークは無事に奨学金を得ることができた。
　初演はスメタナの指揮で行われた。ドヴォルザークが自分の交響曲の演奏を実際に聴いたのはこれが初めてだった。残念ながら批評は芳しくなく、この交響曲は作曲者の没後、1911年まで出版されなかった。しかしドヴォルザーク自身はこの曲に愛着を持っていて、亡くなる数日前にも楽譜を熱心に眺めていたと伝えられる。
　全曲は3つの楽章からなる。彼の交響曲でスケルツォがないのはこの曲のみだが、終楽章にはスケルツォ的な要素が溶け込んでいるとみることもできる。スメタナの弟子で、ドヴォルザークの才能を早くから認めていた作曲家ルドヴィーク・プロハースカは、終楽章の主題をもとにスケルツォ楽章を作ってはどうかと提案したことがあるが、ドヴォルザークはその案を採用しなかった。

　第1楽章　アレグロ・モデラート　ソナタ形式。旋回音形が特徴的な変ホ長調の第1主題で始まる。第2主題は変ト長調で、「ソ♭－ファ－ミ♭－レ♭（移動ドだとド－シ－ラ－ソ）」という下行音形で始まる素朴な旋律だが、この主題の内声にも第1主題の旋回音形が聞こえる。翳りを帯びた展開部では、第2主題の存在感が大きい。それに続く再現部は主題の単純な再現ではなく、音楽は第1主題に基づいて熱く高揚していき、輝かしいクライマックスを築く（第2主題は再現されない）。
　第2楽章　アダージョ・モルト、テンポ・ディ・マルチア　3部形式の葬送行進曲で、全曲中でもっとも長い。主部は嬰ハ短調で、悲痛な主題が木管と弦によって提示される。中間部は、変ニ長調の温かみのある主題で始まる。この部分ではハープが印象的に使われているが、当時、交響曲にハープを使うことは、ベルリオーズの《幻想交響曲》のような先例があったとはいえ、非常に異例のことだった。中間部冒頭の主題が、金管によって壮大に演奏されると、やがて主部の再現となるが、今回は大幅に短縮されている。その後、中間部の主題を用いたコーダで静かに楽章を閉じる。
　第3楽章　フィナーレ／アレグロ・ヴィヴァーチェ　「A－B－A－B－A」の形式と見ることができるが、ソナタ形式の展開部風の部分を含み、副次的な主題も多めに投入されるなど、構成はかなり自由。その一方で、序奏と2つの主題はすべて同一のリズムを共有し、それによって楽章全体が強固に統一されている。まず、やや長めの序奏に続き、変ホ長調の快活なA主題をピッコロ、オーボエ、第1ヴァイオリンが提示。B主題はハ長調で、ピッコロとオーボエが軽快に奏する。その後は、明るさと力強さを保ったままエネルギッシュに進み、終結に至る。
（増田良介）

作曲年代	1873年4月～7月4日　改訂／1887～89年
初　　演	1874年3月29日　プラハ　ベドジフ・スメタナ指揮　フィルハーモニー管弦楽団
楽器編成	ピッコロ、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、トライアングル、ハープ、弦楽5部

【当日券情報】第1002回定期演奏会Cシリーズ（6/27up）
都響主催公演では、都響WEBチケットで当日券を販売いたします。
　【販売時間】
公演当日10:00～開演時間の30分前まで。　※無くなり次第終了
　【販売席】
全席種販売予定
　【販売方法】
都響WEBチケット（座席選択可）
　【受取・支払方法】
①セブンイレブンで発券
　・セブンイレブンでお支払い（クレジットカード、現金でお支払いただけます）
　・都響会員割引がご利用いただけます。　
※会場近くにセブンイレブンが無い場合もございます。事前にご確認の上、ご来場く
ださい。（東京文化会館とサントリーホールは近くにございません）
②電子チケット（スマートフォンとLINEアプリが必要です）
　・クレジットカードでオンライン決済
　・都響会員割引・U-25割引がご利用いただけます。

なお、WEB当日券に余裕がある場合にのみ、会場でも販売いたします。
会場販売では、
・開場時間から販売いたします。※会場販売分の販売枚数が無くなり次第終了。
・座席ランクは選べますが、座席の場所はお選びいただけません。
・お支払はクレジットカード、交通系IC、QRコード決済でお願いします。現金はご利用いただけません。
・U-25割引がご利用いただけます。

※東京芸術劇場改修期間中（2024年9月末～）の定期Cは休止し、2024年度は全6回といたします。

定期演奏会1000回記念キャンペーン

聴きどころ

2010年度から2017年度の8年間にわたり都響首席客演指揮者を務め、今やバンベルク響首席指揮者をはじめ、2025/26シーズンには英国ロイヤル・オペラハウス音楽監督に就任するなど躍進が続くヤクブ・フルシャが、7年ぶりに都響指揮台に登場！当初予定されていた2020年12月がコロナ禍でキャンセルとなったこともあり、待望久しい共演です。Ｃ定期＋都響スペシャルはチェコ名曲選。2024年が生誕200年に当たるスメタナの歌劇『リブシェ』序曲は、堂々たるファンファーレで始まる荘厳な音楽。ヤナーチェクの歌劇『利口な女狐の物語』のエッセンスをオーケストラだけで味わえるようフルシャ自身が編んだスケールの大きな組曲は、この演奏会の白眉と言ってもいいでしょう。そして、ドヴォルザークの第3交響曲は、ワーグナーからの影響のもとで書かれた、魅力的な楽想を持つ3楽章仕立ての野心作です。