定期演奏会 Bシリーズ

第1011回定期演奏会Bシリーズ

終了日時：2024年11月20日（水） 19:00開演（18:00開場）

場所：サントリーホールホール案内座席表

【シェーンベルク生誕150年記念】

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出演

指揮／小泉和裕

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曲目

モーツァルト：ディヴェルティメント第17番ニ長調 K.334 (320b)

曲目解説
シェーンベルク：交響詩《ペレアスとメリザンド》op.5

曲目解説

モーツァルト：ディヴェルティメント第17番ニ長調 K.334（320b）

　「ディヴェルティメント（divertimento）」は、イタリア語の動詞「divertire（楽しませる）」に由来する「気晴らし」や「娯楽」といった意味を持つ言葉で、とくにフランツ・ヨーゼフ・ハイドン（1732～1809）やヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト（1756～91）らが活躍した古典派の時代にこの名を冠した多楽章形式の器楽曲が数多く作曲された。
　「嬉遊曲（喜遊曲）」という訳語が想起させるような気軽に楽しめる作品の多い分野だが、必ずしも「軽い」娯楽音楽のみを指す言葉ではない点には注意が必要だろう。1750～80年頃のオーストリアにおいて「ディヴェルティメント」は、各パートを1人の奏者が担当するソロ編成の楽曲のタイトルとして広く用いられており、時には「ソナタ」の代わりの語としても使用されるなど、その用例にはかなりの幅があった。作曲の目的や楽器編成、楽章構成なども様々であり、モーツァルトも弦楽三重奏や弦楽四重奏、管楽合奏、管楽器と弦楽器の混合編成など、多彩な編成による「ディヴェルティメント」を遺している。
　ディヴェルティメント第17番は、2本のホルンと弦楽4部（第1、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、バス）のために書かれた作品だ。働き口を得るべく意気揚々と出かけたマンハイム・パリ旅行（1777～79）で、期待した結果を得られなかったばかりか同行した母アンナ・マリア（1720～78）の死に直面し、さらにはアロイジア・ウェーバー（1760頃～1839／後に妻となるコンスタンツェの姉）との失恋までも経験した若きモーツァルトは、1779年1月、失意のうちにザルツブルクに帰郷した。
　以後、傷心の作曲家は翌1780年11月にミュンヘンへ向けて再び出発するまでの2年弱を故郷ザルツブルクで宮廷オルガン奏者として過ごすことになる。ディヴェルティメント第17番はちょうどこの頃、1779年または1780年の夏に書かれたと考えられている作品であり、同地の名門貴族ロービニヒ家の子息で、モーツァルトが親しみを込めて「ジーゲル」と呼んでいた友人、ジークムント・ロービニヒ・フォン・ロッテンフェルト（1760～1823）のザルツブルク大学卒業（1780年7月）を祝うために、行進曲ニ長調K.445（320c）とあわせて演奏されたと推測されている。同時期に書かれた《戴冠式ミサ》K.317やヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K.364、《ポストホルン・セレナード》ニ長調K.320などとともに、モーツァルトのザルツブルク時代最後の2年間を彩る名作のひとつである。
　作品は6楽章構成。モーツァルトがザルツブルク時代に手掛けた他の管楽器と弦楽器のためのディヴェルティメントと同様に、メヌエット楽章を複数有するかたちで書かれている。

　第1楽章　アレグロ　ニ長調　第1ヴァイオリンが奏でる流麗な第1主題で幕を開けるソナタ形式楽章。しなやかに音階を上下する第1主題に対して、第2ヴァイオリンが提示する第2主題（イ長調）は、下行分散和音が印象的な弾むような旋律であり、まもなく第1ヴァイオリンによって軽やかに変奏される。
　第2楽章　主題と変奏／アンダンテ　ニ短調　主題と6つの変奏から成る変奏曲楽章。第1ヴァイオリンが主題を提示して始まり、3連符を中心とした第1変奏、リズミカルなオクターヴの動きに始まる第2変奏が続く。付点リズムが印象に残る第3変奏を経てたどり着く第4変奏は、ホルンの二重奏が朗らかに鳴り響くニ長調の変奏であり、よいアクセントになっている。第5変奏は再びニ短調に戻り、哀感を帯びた対話を繰り広げる。そして最後は、第2ヴァイオリン以下の3声部が奏でるピッツィカートの響きの中、第1ヴァイオリンが技巧的なパッセージを奏でる第6変奏となり、手短な終結部で静かに楽章を締めくくる。
　第3楽章　メヌエット　ニ長調　第1ヴァイオリンとヴィオラのユニゾンの調べで始まるメヌエット楽章。単に優雅なだけでなく、時折半音階的な翳りを帯びるところが魅力的だ。トリオは第1ヴァイオリンが颯爽と駆ける軽やかな音楽。モーツァルトのメヌエットの中でもとりわけ有名な楽章であり、しばしばヴァイオリンとピアノのための二重奏編曲版などでも演奏される。
　第4楽章　アダージョ　イ長調　抒情美あふれる緩徐楽章であり、楽章全体を通して弦楽器のみで演奏される。第1ヴァイオリンが歌う気品に満ちた第1主題と、第2ヴァイオリンとヴィオラの先導で始まるホ長調の第2主題を中心としたソナタ形式で構成されている。
　第5楽章　メヌエット　ニ長調　第3楽章とは対照的な快活で力強い主題に始まるメヌエット楽章。こちらはコントラストに富んだ2つのトリオを挟む構成で書かれている。
　第6楽章　ロンド／アレグロ　ニ長調　冒頭から登場する晴れやかな表情の主題を中心としたロンド形式楽章。第1ヴァイオリン・パートに、さながらヴァイオリン協奏曲の独奏パートであるかのような華麗な技巧が散りばめられた、華やかなフィナーレ楽章である。
（本田裕暉）

作曲年代	1779年夏または1780年夏
初　　演	不詳（1780年ザルツブルク？）
楽器編成	ホルン2、弦楽4部

シェーンベルク：交響詩《ペレアスとメリザンド》op.5

　ベルギー出身の象徴派詩人モーリス・メーテルリンク（1862～1949）が1892年に発表した戯曲『ペレアスとメリザンド』は、多くの作曲家を魅了し、クロード・ドビュッシー（1862～1918）によって歌劇化されたほか、いくつもの楽曲に着想を与えることとなった。
　アルノルト・シェーンベルク（1874～1951）は12音音楽の提唱者として知られるが、12音技法を考案したのは1920年代のことであり、若い頃は後期ロマン派的なスタイルの音楽を書いていた。交響詩《ペレアスとメリザンド》は、《浄められた夜》や《グレの歌》と並んで、後期ロマン派時代の彼を代表する大作である。
　あるとき、シェーンベルクはリヒャルト・シュトラウス（1864～1949）から、『ペレアスとメリザンド』に基づく歌劇を書くことを勧められた。ドビュッシーが既に歌劇を作曲していたことを2人は知らなかったが、シェーンベルクは歌劇ではなく交響詩の形態を採用し、その中で原作の物語を仔細にたどることにした。
この長大な交響詩は全体として自由なソナタ形式を採ると同時に、展開部に相当する箇所にはスケルツォと緩徐楽章にあたるエピソードが挿入されて、4楽章形式の交響曲としての体裁をも備えている。また戯曲の登場人物やテーマを表す諸動機が設定されていて、それらの発展によって物語の展開が暗示される。

　第1部（以下の区分は便宜的なもので、スコアには明記されていない）は「森」を表す緩やかな序奏に始まる。その模糊とした雰囲気の切れ目に顔を出すバスクラリネットによる短い「運命」の動機は曲の展開上重要である。やがてオーボエに「メリザンド」の主題が登場し、それを追うようにホルンが「ゴロー」の主題を奏して2人の出会いを描いた後、主部に突入する。弦楽器に登場する第1主題は「ゴロー」の主題から派生したものであり、その後トランペットによって軽やかに歌われつつ導入される第2主題は「ペレアス」を示す。展開部に入り、「メリザンド」の主題が立ち戻ると、クラリネットに印象的な上行音形が現れるが、これはペレアスとメリザンドの間の「愛の目覚め」の動機とされる。
　スケルツォに相当する第2部は、泉のほとりで戯れるペレアスとメリザンドを描く。テンポが落ちると3人の登場人物の主題が絡み合って、塔の上と下に分かれてペレアスとメリザンドが言葉を交わす場面を描写する。その後スケルツォ主部の動きが微かに戻ると、低音楽器の特殊な音色がもたらす不気味な雰囲気と共に、ペレアスとゴローが城の地下に降りていく場面が描かれる。
　「愛の目覚め」の動機に基づく推移部を経て、音楽は緩徐楽章にあたる第3部に入り、泉のほとりでのペレアスとメリザンドの待ち合わせから愛の告白、ペレアスの死までを描く。諸主題が絡み合う中、長大でロマンティックな主題が2人の愛を歌い上げるが、高揚の果てにゴローが乱入し、ペレアスを刺し殺してしまう。
　ホルンが途切れ途切れに「ペレアス」の主題を歌い、木管楽器が「メリザンド」の主題を静かに歌うと、音楽はソナタ形式の再現部にあたり、メリザンドの死を描く第4部へと移行する。序奏の雰囲気が回帰した後、ここまでの主要主題が回想されていくが、多くの主題は変容を受けたり、他の動機と結合されたりして、原形をとどめない。最後に「運命」の動機と「ゴロー」の主題が回想され、全曲は静かに幕を閉じる。
（相場ひろ）

作曲年代	1902年7月～1903年2月
初　　演	1905年1月26日　ウィーン　作曲者指揮　ウィーン演奏協会管弦楽団
楽器編成	ピッコロ、フルート3（第3はピッコロ持替）、オーボエ3（第3はイングリッシュホルン持替）、イングリッシュホルン、小クラリネット、クラリネット3（第3はバスクラリネット持替）、バスクラリネット、ファゴット3、コントラファゴット、ホルン8、トランペット4、トロンボーン5、テューバ、ティンパニ、トライアングル、シンバル、大太鼓、中太鼓、タムタム、グロッケンシュピール、ハープ2、弦楽5部

【当日券情報】第1011回定期演奏会Bシリーズ（11/19up）
都響主催公演では、都響WEBチケットで当日券を販売いたします。
　【販売時間】
公演当日10:00～開演時間の30分前まで。　※無くなり次第終了
　【販売席】
全席種販売予定
　【販売方法】
都響WEBチケット（座席選択可）
　【受取・支払方法】
①セブンイレブンで発券
　・セブンイレブンでお支払い（クレジットカード、現金でお支払いただけます）
　・都響会員割引がご利用いただけます。　
※会場近くにセブンイレブンが無い場合もございます。事前にご確認の上、ご来場く
ださい。（東京文化会館とサントリーホールは近くにございません）
②電子チケット（スマートフォンとLINEアプリが必要です）
　・クレジットカードでオンライン決済
　・都響会員割引・U-25割引がご利用いただけます。

なお、WEB当日券に余裕がある場合にのみ、会場でも販売いたします。
会場販売では、
・開場時間から販売いたします。※会場販売分の販売枚数が無くなり次第終了。
・座席ランクは選べますが、座席の場所はお選びいただけません。
・お支払はクレジットカード、交通系IC、QRコード決済でお願いします。現金はご利用いただけません。
・U-25割引がご利用いただけます。

聴きどころ

シェーンベルクが後期ロマン派のスタイルで書いた大作《ペレアスとメリザンド》は単に物語を追った描写曲ではなく、一楽章形式の交響曲とも言えるような計算された構造の中で、ライトモティーフの使用、大胆な和声、複雑な対位法などが駆使された濃密な音楽が横溢する傑作。前半は、これも小泉が愛する名曲、モーツァルトのディヴェルティメントK.334。シンフォニーオーケストラの性能をフルに活かす小泉の指揮が繰り出す豊かな響きにひたってください。