定期演奏会 Bシリーズ

第1027回定期演奏会Bシリーズ

終了日時：2025年10月1日（水） 19:00開演（18:00開場）

場所：サントリーホールホール案内座席表

【ショスタコーヴィチ没後50年記念】

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出演

指揮／ヨーン・ストルゴーズ

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曲目

オウティ・タルキアイネン：極北の真珠－室内管弦楽のための協奏曲－（2023）[日本初演]

曲目解説
ショスタコーヴィチ：交響曲第11番ト短調 op.103《1905年》

曲目解説

｜極北の真珠－室内管弦楽のための協奏曲－（2023）

Ⅰ 生成…
Ⅱ アメジスト
Ⅲ 淡水真珠貝
Ⅳ クロセセリ
Ⅴ シロフクロウ
Ⅵ キンバイソウ
Ⅶ ハロ・スカイ
Ⅷ 大地

　北極圏は、気候変動の進行により、世界のどの地域よりもはるかに速く温暖化が進んでいる。淡水真珠貝やシロフクロウなど、北極圏の多くの希少種が絶滅の危機に瀕している。サーミ人（北極圏の先住民）の詩人ニルス＝アスラク・ヴァルケアパー（1943～2001）は、自分たちを環境と不可分なものとして描き、人間と自然との境界は存在しないものと捉えていた。気候変動により環境破壊が進むにつれ、彼らのような先住民族への注目はますます高まっている。私たちは本能的に、彼らの生き方に新しいモデルを求めているのかもしれない。なぜなら、私たち自身のライフスタイルや過剰消費が、自然を破壊するだけでなく、私たち自身をも滅ぼしつつあると気付き始めているからだ。
　室内管弦楽のための協奏曲《極北の真珠》は、小さな性格的楽章をブレスレットのように連ねた作品であり、唯一無二の北極圏の自然とその繊細なバランスへの賛辞である。この協奏曲は、ヨーン・ストルゴーズとラップランド室内管弦楽団に捧げ、楽員一人ひとりが輝きを放てるように作曲した。
（オウティ・タルキアイネン／訳：飯田有抄）

作曲年代	2023年
初　　演	世界初演／2023年6月1日　サラ（フィンランド）　サラ教会ヨーン・ストルゴーズ指揮　ラップランド室内管弦楽団日本初演／2025年10月1日　東京　サントリーホール（本演奏会）ヨーン・ストルゴーズ指揮　東京都交響楽団
楽器編成	フルート（アルトフルート持替）、オーボエ、クラリネット（バスクラリネット持替）、ファゴット、ホルン、大太鼓、アンティークシンバル、グロッケンシュピール、ゴング、マリンバ、サスペンデッドシンバル、タムタム、テンプルブロック、チャイム、ヴィブラフォン、ウッドブロック、弦楽5部（最小で第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ3、チェロ2、コントラバス1と指定されている）

オウティ・タルキアイネン
フィンランド最北の地であるラップランドのロヴァニエミ生まれ。この土地は彼女にとって絶え間ないインスピレーションの源となっている。作曲をヘルシンキのシベリウス・アカデミー、マイアミ大学（アメリカ）、ロンドンのギルドホール音楽演劇学校で学んだ。
学生時代から、人間の声の表現力と自然な真実性に惹かれてきたオウティは、2016年9月に管弦楽付歌曲集《大地、春の娘（The Earth, Springʼs Daughter）》（2014~15）を初演。2022年5月に彼女の初めてのオペラが初演された。『自分の部屋（A Room of Oneʼs Own）』（2020~21）はヴァージニア・ウルフの同名エッセイに基づく作品であり、女性性を探求する一連の作品の最新作である。
近年、オウティはベルリン・フィル、BBC響、ボストン響、サンフランシスコ響、ロイヤル・ストックホルム・フィル、エーテボリ響、フィンランド放送響、ヘルシンキ・フィル、アイスランド響などから委嘱を受け、作品はミネソタ響、セントルイス響、デトロイト響、アトランタ響、ヒューストン響、オスロ・フィル、トーンキュンストラー管などによって演奏されている。
フィンランド最北地域との深い結びつきは《氷の歌（Songs of the Ice）》（2019）とその姉妹作《白夜変奏曲（Midnight Sun Variations）》（2019）に暗示されており、後者は2019年BBCプロムスで初演された。サクソフォン協奏曲《サイヴォ（Saivo）》（2016）は、2018年に北欧評議会音楽賞にノミネートされ、後にオンディーヌ・レーベルより《大地、春の娘》と共にリリースされた。
オウティは欧米の著名な指揮者や音楽家たちと共演し、フランス・ユゼルシュ古典音楽祭のコンポーザー・イン・レジデンスを務めた。しかし彼女の心は北に留まっており、「私の内には最北の地域への根源的な憧憬がある」と語っている。オウティはラップランドで毎年開催されるサイレンス・フェスティヴァルの共同芸術監督を務め、一時期はロヴァニエミからさらに300km北にある極北の町イヴァロに住んだ。ヨーロッパ最北端の荒野は、今もなお彼女の音楽に表現され続けている。その音楽は、美しさと残酷さ、豊かさと儚さが絡み合う魅惑的な組み合わせを特徴としている。
（アンドリュー・メラーによるバイオグラフィの抄訳）

｜ショスタコーヴィチ：交響曲第11番ト短調 op.103《1905年》

　ドミトリー・ショスタコーヴィチ（1906～75）の交響曲第11番《1905年》は副題が物語るとおり、1905年のいわゆる第一次ロシア革命、とりわけ「血の日曜日事件」を軸に据えた大作である。この革命は、請願のデモ行進に対し政府軍が発砲して多数の死者を出した「血の日曜日事件」をきっかけに、全国的な労働者・兵士・農民の蜂起やゼネストへ広がり、最後は皇帝が国会設立と権利拡大を約束して収束した。ソ連時代の歴史家は、これで社会に大きな亀裂が生まれ、労働者の革命精神が育ち、1917年の十月革命の重要な序章になったとみなした。
　ショスタコーヴィチがこの事件を題材に交響曲を書こうと構想したのは1956年である。自身の50歳を記念して書かれたエッセイ「旅路の思索」には、おそらく構想中だった本曲に触れた一節がある。いわく、「今私は交響曲第11番に取り組んでおり、おそらく冬には完成するだろう。この交響曲の主題は1905年の革命である。わが祖国の歴史において、労働革命歌にはっきりと反映されているこの時期のことを、私は心より愛している。交響曲にこうした歌の旋律を広く引用するかについてはまだわからないが、交響曲の音楽言語は、ロシアの革命歌の性格に近いものになるだろう」。実際に着手したのは翌1957年2月だが、当初の計画どおり多数の革命歌を取り入れ、蜂起の経過を雄弁に描く標題音楽となった。
　こうして完成した新作交響曲は、1917年の十月革命40周年を前にしたソ連楽壇の注目の的となり、革命記念式典の一部として初演された。翌1958年には、当時最高の名誉であるレーニン賞を受賞している。
　全4楽章は切れ目なく演奏され、同一主題が各所で再登場して音楽全体を有機的に形作る。本曲の特徴は、当時広く歌われた革命歌や民謡の旋律、さらに帝政期の抑圧を主題とするショスタコーヴィチ自身の音楽を要所で引用することで、歴史的出来事を音楽によって聴き手の心によみがえらせる点にある。これらのメロディは、雄弁な管弦楽法と相まって凄惨な歴史のイメージを呼び起こし、無言の合唱のように響く。
　第1楽章「宮殿前広場」（アダージョ）は、交響曲全体をソナタ形式と見た場合、主部への前奏にあたる。薄い響きの弦とハープ、遠くから響くようなティンパニと信号ラッパの断片によって、寒々しく重苦しい都市の風景を描く。楽章途中でフルートが提示するのは、囚人の暗い心境を歌う革命歌「聴いてくれ！」。さらに中間部では、民謡として親しまれた「囚人」が、低弦によって行進曲風に荘重に奏でられる。これらの要素が絡み合いながら緊張は蓄積し、やがて冒頭のモチーフ（主題）が戻って静けさが訪れる。
　その直後、不気味にうごめく低弦が現れ、第2楽章「1月9日」（アレグロ）へとつながる。提示部と展開部前半に相当するこの楽章では、それまでに蓄積された緊張感が爆発的なエネルギーへと変化する。クラリネットとファゴットがユニゾンで提示する躍動的な第1主題（「おお、皇帝〔ツァーリ〕われらが父よ……」）と、最初のクライマックスが収まった後に金管が奏するコラール風の第2主題（「脱帽せよ！……」）は、自作の合唱曲「1月9日」からの引用である。タイトルが示すとおり、1905年1月9日は「血の日曜日事件」の当日だ。民衆の呼び声を表す2つの主題が重なって第2のクライマックスに達したのち、第1楽章の冒頭主題とともに短い静寂が訪れる（「宮殿前広場」の回想）。
　突如、機関銃の射撃音を思わせる小太鼓が炸裂、全オーケストラによる激烈なフガートが始まり、虐殺の光景と混乱、恐怖が襲いかかる。やがて暴力は遠のき、冬の冷え冷えとした静けさが戻って楽章は幕を閉じる。
　第3楽章「永遠の記憶」（アダージョ）は、間奏曲風の楽章。ピッツィカートの低弦の重々しい歩みに乗せて、革命時に歌われ、日本でも歌い継がれた葬送行進曲「同志は倒れぬ」をヴィオラが奏でる。中間部には革命歌「こんにちは、自由よ」に由来する旋律も姿を見せ（第1ヴァイオリン）、第2主題（「脱帽せよ！……」）とともに哀悼は激情と化し、音楽は最高潮に達する。
　第4楽章「警鐘」（アレグロ・ノン・トロッポ）。交響曲全体の展開部後半と再現部にあたる。冒頭、革命歌「怒り狂え、暴君どもよ」によって管楽器が咆哮。やがてポーランドの労働歌として知られる「ワルシャワ労働歌」（弦楽合奏／ほぼ全ての音にダウンボウ〔下げ弓〕の指示がある）、さらに弟子の作曲家ゲオルギー・スヴィリードフ（1915～98）の喜歌劇『灯火』の一節が高らかなファンファーレとして引用され（トランペット）、力強く人々を奮い立たせる。クライマックスの後、第1主題（「おお、皇帝〔ツァーリ〕われらが父よ……」）がトゥッティで輝かしく再現されると、音楽は突然静まり、第1楽章冒頭の宮殿前広場の情景が姿を見せ、第2主題（「脱帽せよ！……」）がイングリッシュホルンで回想される。バスクラリネットによる第2楽章冒頭のうごめく楽想がコーダを導き、民衆側にとっても権力側にとっても勝利とも敗北とも言い切れない、第一次ロシア革命の複雑な姿を象徴するかのように、長調とも短調ともつかぬ鐘の響きの中、音楽は熱を帯びたまま終結する。
（山本明尚）

作曲年代	1957年2月～8月4日
初　　演	1957年10月30日　モスクワ音楽院大ホールナタン・ラフリン指揮　ソヴィエト国立交響楽団
楽器編成	フルート3（第3はピッコロ持替）、オーボエ3（第3はイングリッシュホルン持替）、クラリネット3（第3はバスクラリネット持替）、ファゴット3（第3はコントラファゴット持替）、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、大太鼓、小太鼓、シンバル、トライアングル、タムタム、シロフォン、鐘、ハープ2、チェレスタ、弦楽5部

【当日券情報】第1027回定期演奏会Bシリーズ（9/30up）
都響主催公演では、都響WEBチケットで当日券を販売いたします。
　【販売時間】
公演当日10:00～開演時間の30分前まで。　※無くなり次第終了
　【販売席】
全席種販売予定
　【販売方法】
都響WEBチケット（座席選択可）
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①セブンイレブンで発券
　・セブンイレブンでお支払い（クレジットカード、現金でお支払いただけます）
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ださい。（東京文化会館とサントリーホールは近くにございません）
②電子チケット（スマートフォンとLINEアプリが必要です）
　・クレジットカードでオンライン決済
　・都響会員割引・U-25割引がご利用いただけます。

なお、WEB当日券に余裕がある場合にのみ、会場でも販売いたします。
会場販売では、
・開場時間から販売いたします。※会場販売分の販売枚数が無くなり次第終了。
・座席ランクは選べますが、座席の場所はお選びいただけません。
・お支払はクレジットカード、交通系IC、QRコード決済でお願いします。現金はご利用いただけません。
・U-25割引がご利用いただけます。

聴きどころ

2023年1月の定期においてマデトヤの交響曲第2番ほかで素晴らしい演奏を聴かせたストルゴーズは、現在首席指揮者を務めるBBCフィルハーモニックとのショスタコーヴィチ交響曲全曲録音が進行中。その中から、CDはもちろん、2019年BBCプロムスでの演奏も絶賛を博した第11番を指揮します。1905年のいわゆる「血の日曜日事件」を題材としたこのドラマティックな交響曲は、今やショスタコーヴィチ作品の中でも屈指の人気曲。実直なアプローチで曲の内面に迫ります。
前半は、フィンランドの新進作曲家、オウティ・タルキアイネンがストルゴーズとラップランド室内管弦楽団のために書いた《極北の真珠》。地球規模の気候変動を憂う作曲家が北極圏の自然や生き物によせた賛辞であると同時に、各楽器の奏者にソリスティックな光を当てた、文字通り「室内管弦楽のための協奏曲」です。