定期演奏会 Cシリーズ

第997回定期演奏会Cシリーズ

終了日時：2024年4月27日（土） 14:00開演（13:00開場）

場所：東京芸術劇場コンサートホールホール案内座席表

【定期演奏会1000回記念シリーズ②】

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指揮／小泉和裕

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曲目

シューベルト：交響曲第7番ロ短調 D759《未完成》

曲目解説
シューベルト：交響曲第8番ハ長調 D944《ザ・グレート》

曲目解説

今回のプログラムは、フランツ・シューベルト（1797～1828）の後期に書かれた、スケールも内容もきわめて大掛かりな2つの交響曲である。しかも、彼の生前には初演されなかったという曰くつきの経緯をたどった作品だ。また彼が残した夥しい楽曲の中でも、知名度、人気ともに不動の地位を保っている。そんな2大作品を取り巻く諸相とは、いかなるものだったのか。

シューベルト：交響曲第7番ロ短調 D759《未完成》

　シューベルトが25歳の折り、1822年に作られた。18世紀後半以降に生まれた交響曲の多くが、通常4つの楽章から構成されているところを、第2楽章までしか完成されず、第3楽章の作曲は途中で放棄されている。またこのことから、「未完成」という呼び名が後世に付けられた。
　といってもシューベルトの場合、少なからぬ作品が未完で終わっているため、そのこと自体は珍しくはない。当交響曲の番号についても、かつては「第8番」とされていたにもかかわらず、現在は「第7番」となっているのは、完成と見なすことができる交響曲を彼が幾つ書いているのか、人によって数え方が異なるためだ。
　むしろ重要なのは、自らの先達であるルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン（1770～1827）を崇拝していたにもかかわらず、彼の代名詞ともいえる闘争型の交響曲をシューベルト自身が書かなかったことだろう。とりわけ交響曲ロ短調においてその傾向は顕著であり、第1楽章では漆黒の淵がどこまでも広がり、第2楽章ではあまりにも儚くあまりにも美しい憧れが現れては消えてゆく点が何にもまさる特徴である。なぜだろうか。
　まず、ベートーヴェンのあまりにも圧倒的な存在感の下、彼とは異なる作風の路線をシューベルトが歩まざるをえなかったことが挙げられる。穿った見方をすればベートーヴェン・コンプレックスともいえる状況であって、巨大すぎる先達の影の下、その後半生と同時代を生きた若手のシューベルトが委縮してしまったとも考えられなくもない。
　またシューベルトの中に、ベートーヴェンに対する困惑が皆無だったわけではない。1816年、彼は自らの師であったアントニオ・サリエリ（1750～1825／なおベートーヴェンも彼に師事していた）に対し、次のように述べている。曰くベートーヴェンの曲は、「悲劇的なものと喜劇的なもの（中略）、英雄的なものと獰猛なもの（中略）を一緒くたにし、取り違え、区別しない奇怪さ」そのものであると……。
　さらにシューベルトの生きた時代には、ベートーヴェンが理想としたような革命的姿勢への懐疑が生まれて久しかった。例えば革命思想の伝播を唱え、ベートーヴェンが一時熱狂していたナポレオン・ボナパルト（1769～1821）が、典型的な存在だろう。何しろ現実の彼は、ヨーロッパ各地を戦火の渦に巻き込み、自らもフランス皇帝に即位するなど“権力者”としての地位固めに精力を注ぐようになってしまったのだから。
　そのナポレオンが失脚した後は、フランス革命以前の社会体制を取り戻そうとする保守反動の嵐がヨーロッパ中で吹き荒れる。とりわけその中心地となったのがナポレオンに蹂躙されたオーストリア帝国の都ウィーンであり、人々は政治的な発言を当局から固く封じられてしまった（逆に、ナポレオン時代に続いた戦闘状態がようやく終息する中、政治的な自由と引き換えに、ささやかな平和を享受できる環境が整えられたともいえる）。
　加えてシューベルトもベートーヴェンと同様、不治の病に侵されていた。ただしそれは梅毒であり、しかも当時、性に関する病気について口外することはタブーだった。そのため病が進行してゆくにつれ、いつか気が狂って死ぬのではないかという不安を、彼は誰にも打ち明けられないまま悶々と抱え込むこととなる。交響曲ロ短調が作られた時期のシューベルトも、梅毒の症状が悪化し、入院を余儀なくされてしまった。
　入院のおかげもあってシューベルトは一応のところ健康を取り戻し、退院する。だがその後、交響曲ロ短調の作曲が、もはや続行されることはなかった。
　つまり、作曲当時抱えていた悶々たる不安や絶望が解消されたため、もはや曲を書くモチベーションがなくなった、という見方がある。一応スケルツォ形式の第3楽章の冒頭部分だけは書き始められたものの、なぜそれが未完のまま放置されてしまったのかをめぐる、1つの説である（ただし、第1・第2楽章が3拍子で書かれており、それに続いて第3楽章も3拍子になるとリズムが平板になってしまうこと、また第1・第2楽章のあまりの奥深さゆえに次の楽章を続けられなかった……といった具合に、美学上の要素に未完成の理由を求めることも可能である）。
　なお作曲のきっかけは、オーストリア南部の都市グラーツの楽友協会から「名誉ディプロマ」を与えられたことに対する返礼だった。完成された第1・第2楽章のみが同協会に送付されたままになった理由も、上の説を踏まえるとよく分かる。そして未完成で眠っていた当作品が発見、初演されたのは、シューベルトが世を去った約40年後の1865年。以降、シューベルトを象徴するオーケストラ曲として、揺るがぬ名声を誇っている。

　「アレグロ・モデラート（中庸に活き活きと）」と指定された第1楽章。冒頭に現れる、ほの暗いロ短調をもとにした「ロ－嬰ハ－ニ（シ－ド♯－レ）」の動機が、楽章全体に張り巡らされてゆく。ソナタ形式の枠組みの中で、慟哭に溢れた第1主題と、憧憬に満ちた第2主題が交差し、シューベルトの置かれていたただならぬ状況を彷彿させる。
　それに続く第2楽章も第1楽章と同様3拍子で書かれ、テンポ的には少し遅めの「アンダンテ・コン・モート（歩むように前進して、動きをもって）」と指示されている。こちらも前楽章のごとく、慰めと嘆きをそれぞれ湛えた主題が交互に現れた末、最後は浄化の境地へと至る。
（小宮正安）

作曲年代	1822年
初　　演	1865年12月17日　ウィーン　レドゥーテンザールヨハン・ヘルベック指揮　ウィーン楽友協会管弦楽団
楽器編成	フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦楽5部

シューベルト：交響曲第8番ハ長調 D944《ザ・グレート》

　交響曲《未完成》で顕著になったように、シューベルトの交響曲は、ベートーヴェンの交響曲とは明らかに異なる方向性を示してゆく。それがさらに推し進められたのが、交響曲《ザ・グレート》だ。
　最初に作曲が行われたのは、シューベルトが28歳から29歳の間、つまり1825年から26年にかけて。オーストリアの温泉保養地、グムンデンとガスタインで書かれ、これをもとに、彼が早すぎる晩年を迎えた1828年ころに改訂され現在の形になったという見方が一般的である（ただし詳しい経緯については、今なお謎の部分も多い）。なおシューベルトが温泉保養に行った主な目的も、梅毒に蝕まれゆく心身を癒やすためだった。
　いずれにしても、「未完成」の形で終わってしまった交響曲ロ短調とは異なり、交響曲ハ長調は、このジャンルの王道のスタイルに則り、4つの楽章から成っている。しかも、ベートーヴェンをはじめとする古典派の先達たちの交響曲によく見られるように、楽器を鳴らしやすい、つまり輝かしい響きの出るハ長調を基本としている点も重要だ（その究極の形こそ、「運命」の名前で親しまれているベートーヴェンの交響曲第5番フィナーレである）。
　なおシューベルトは1818年、比較的小ぶりの交響曲第6番をハ長調という調性で既に書いている。それゆえに、1826年の交響曲は「巨大な／偉大なハ長調交響曲」という意味で「ザ・グレート」という通称で親しまれている。ただし器楽のみの（つまり「第九」のように声楽が入らない）交響曲としては異例の長さとなっている点が特徴だ。しかも、圧倒的なスケールを擁しつつ、エネルギーを外へ外へと発散して堅固な構築物を築いてゆくベートーヴェンのそれとは異なり、エネルギーを内側に溜め込んで小さな繰り返しをひたすら集積しては、さらに巨大化してゆく傾向をたどる。
　シューベルト自身はこの作品を、自らと縁の深いウィーン楽友協会（彼は協会主催の室内楽の夕べで幾つもの歌曲を初演したり、1827年には協会の理事に就任したりしている）に献呈し、同協会のオーケストラ（ウィーン楽友協会管弦楽団）に初演してもらおうと考えた。だが、オーケストラのメンバーの多くは腕こそ立つもののアマチュアであり、この斬新な作品はあまりに難しすぎたのだろう。
　結局、当交響曲はお蔵入りとなり、シューベルトの死後10年余りを経た1839年、彼の兄であるフェルディナント・シューベルト（1794～1859）の元を訪ねたローベルト・シューマン（1810～56）によって“再発見”される。そしてそれからほぼ間を置かずに、シューマンの盟友であるフェーリクス・メンデルスゾーン（1809～47）の指揮の下、彼が楽長を務めるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団によって初演された（ただし1829年に、当時ウィーンに存在していた演奏団体の1つコンセルト・スピリチュエルの演奏会で初演されたのではないか、という見方も一部にはある）。

　第1楽章は「アンダンテ（歩むように前進して）」の長大な序奏に続き、「アレグロ・マ・ノン・トロッポ（活き活きと、ただし急ぎ過ぎず）」の主部がソナタ形式で現れる。速度指定からもうかがえるように2分の2拍子のハ長調に基づき、“歩み”や“さすらい”を終生のモチーフとしたシューベルトならではの世界が築かれる。
　この“歩み”は、4分の2拍子、「アンダンテ・コン・モート（動きをもって歩むように）」と指定された第2楽章にも受け継がれるが、うって変わってイ短調の寂しげな曲想に、儚げな長調が明滅する。
　第3楽章はハ長調に戻り、「アレグロ・ヴィヴァーチェ（速く、活発に）」という指示の下、ベートーヴェンばりのスケルツォとなるが、ここでもシューベルト独自の優しく柔らかな音楽が顔を出すのが特徴だ。
　第4楽章は前楽章と同じくハ長調の「アレグロ・ヴィヴァーチェ」で4分の2拍子。緩やかなソナタ形式であり、1155小節にも及ぶ長大なフィナーレである。
（小宮正安）

作曲年代	1825～26年　1828年改訂
初　　演	1839年3月21日　ライプツィヒ　ゲヴァントハウスフェーリクス・メンデルスゾーン指揮　ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
楽器編成	フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦楽5部

【当日券情報】第997回定期演奏会Cシリーズ（4/26up）
都響主催公演では、都響WEBチケットで当日券を販売いたします。
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公演当日10:00～開演時間の30分前まで。　※無くなり次第終了
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※会場近くにセブンイレブンが無い場合もございます。事前にご確認の上、ご来場く
ださい。（東京文化会館とサントリーホールは近くにございません）
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　・都響会員割引・U-25割引がご利用いただけます。

なお、WEB当日券に余裕がある場合にのみ、会場でも販売いたします。
会場販売では、
・開場時間から販売いたします。※会場販売分の販売枚数が無くなり次第終了。
・座席ランクは選べますが、座席の場所はお選びいただけません。
・お支払はクレジットカード、交通系IC、QRコード決済でお願いします。現金はご利用いただけません。
・U-25割引がご利用いただけます。

※東京芸術劇場改修期間中（2024年9月末～）の定期Cは休止し、2024年度は全6回といたします。

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